この照らす日月の下は……

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 朝からアスランの機嫌が悪い。
 いったいどうしてなのだろうか。いくら考えてもキラにはわからない。
「僕、なんかしたかなぁ」
 今日したことは、迎えに来た彼にカナードを紹介したことぐらいだ。
 その後はいつものように登校して学校で過ごした。その時にはもう彼の機嫌は悪かったように記憶している。
 それでも学校にいたときはまだマシだったのだとわかったのは、家に帰ってきてからだ。
「キラ!」
 いつもよりとげを含んだ声が耳に届く。
「うるさいぞ、ちび」
 それにキラが言葉を返すよりも先にカナードが口を開いた。
「今、キラは自分の課題を解いているだろうが。邪魔するな」
 厳しい口調だが間違ったことは逝っていないはずだ。実際、自分の目の前の課題は後四分の一ほど残っている。
「だから、手伝うって言っているだろう」
 アスランはカナードに向かってそう言い返す。
「それでは身につかないだろう。自分の都合だけでキラの学習機会を奪うな」
 将来何も出来ない人間になったらどうするのか。カナードがそう続ける。 「キラが『嫌だ』と言うなら考えるが、本人もやりたがっているしな」
 そうだろう、と問いかけられてキラは素直に首を盾にふて見せた。
「知らないこと、覚えるのは楽しいの」
 キラはそしてしっかりと主張する。
「キラ……」
「僕は自分のことは自分で出来るもん」
 アスランに手伝ってもらわなくても、と言外に告げた。
「時間はかかるけど、それでも出来るもん」
 この言葉に、アスランは驚いたような表情を作る。
「本当にキラはそれでいいの? 遊ぶ時間、減るよ?」
「でも、やらなきゃないことはちゃんとやらないとだめだって言われたの」
 だから、終わるまで遊べない。今まで言いたかったセリフをようやく口に出来た。そう認識した瞬間、無意識のうちに笑みがこぼれ落ちる。
「よく言えたな」
 そんなキラの髪をカナードがなでてくれた。その指の感触が気持ちよくてキラは目を細める。
「……何だよ、それ」
 だが、アスランの機嫌はさらに悪くなっていた。
「キラは僕と遊ぶよりもそいつと一緒にいる方がいいの?」
 そのまま彼は二人をにらみつけると怒鳴るように問いかけてくる。
 しかし、キラにはどうして彼がそう言うのかがわからない。そもそも比べられるようなことではないのだ。
「……わかんない」
 答えが出ない以上、そう答えるしかない。そう判断をしてキラはそう言う。
「何故、わからないんだ?」
 簡単な問題だろう、とアスランはさらに問いかけの言葉を投げつけてくる。
「だって、アスランとカナードさんは全然違うもん」
 キラはそう言い返す。
「勝手にしろ! もう、キラなんて知らない」
 そう言うとアスランはリビングへとかけだして行く。勢いよく開けられたドアが大きな音と共に閉められた。
「……僕……」
 何か失敗したのか、とキラは不安になる。
「お前は間違ってない。あいつが勝手に自分の理想をお前に押しつけているだけだ」
 それにカナードはこう言い返してきた。
「全く……昔の俺よりもわがままだな。それこそ、ギナ様の鉄拳制裁を受ければいいものを」
 そう言うギナもミナとムウにそれなりに教育されていたらしいが、と彼は笑う。
「お前は続きをしていろ。俺はカリダさんに報告してくる」
 そう言うとカナードもまた部屋を出て行った。


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最遊釈厄伝